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廊下から1年の教室を見てもどこも異変は感じられなかった。


悲鳴がどこから聞こえて来たのかわからないから、ひとクラスずつ確認していくしかない。


1年A組のドアを開ける。


中には誰もいない。


誰かがいたような形跡もない。


学校が隔離状態になってから、誰も足を踏み入れていないのかもしれない。


念のため死角になっている教卓の下やカーテンの向こう側を確認してみるが、やはり誰もいなかった。


その事に半分安堵しながらB組の教室の前に立った。


その瞬間、岡崎君に襲われそうになった事を思い出し、思わず足がすくんだ。


「愛莉、無理そうなら外で待ってていいよ」


空音があたしの耳元でそう言った。


「でも……」


「教室には岡崎君の血痕が残ってる。何か聞かれたら、あたしがちゃんと説明してあげるから」


そう言われて、あたしは「ありがとう」と、返事をした。


岡崎君は死んでしまったけれど、それでもあたしの中で起きた出来事はまだ消化することができていなかった。


思い出せば、すでに死んでいる岡崎君への恐怖心と怒りがこみあげて来る。