それからあたしたちは、一旦水や塩などを生徒玄関のロッカーに隠し、また校内を歩き出していた。


1階にある3年生の教室から順番に食べ物がないか探していく。


気の遠くなるような作業だったけれど、なにかやることがある状態だと気持ちを落ち着かせることができた。


先輩たちの机の中や鞄の中からは飴やガムと言った食べ物が次々と出て来た。


中には開けていないペットボトルのジュースまで。


買い物袋に次々とそれらを放り込みながら「これなら当分過ごせるな」と、祐矢先輩が笑った。


祐矢先輩の目的は少しでも長く生きて、学校内の様子を記していく事だ。


「そうですね。これなら全部の教室を探し終える頃には袋の中はパンパンですね」


あたしがそう言うと、祐矢先輩は嬉しそうに笑った。


3年生の教室を全部調べ終えた時、アラタ先輩が生徒玄関へと向かった。


オヤツが入っている袋を掃除ロッカーに入れ、中に置いておいた水と調味料を取り出す。


「一旦体育館へ戻ろう。辻本先生も帰ってきてるかもしれねぇからな」


そう言われて、あたしはスマホの電源をつけて時刻を確認した。


もう昼が近い時間だ。


体育館の中には朝から何も食べられていない子もいる。


水だけでも、早く持って行ってあげないと。


そう思い、あたしたちは階段を上がり始めた。