あたしは茫然としてその場に立ち尽くしていた。


岡崎君の死体を前にして空音が大きく肩で呼吸をしている。


「この死体、保健室に運んでおこう」


空音がそう言い、岡崎君の死体の隣に膝をついた。


「どうして……こんな……」


あたしは小さく呟く。


「どうしてって、愛莉は襲われそうになったんだよ?」


「そうだけど……でも、殺す必要なんて……」


あたしが最後まで言う前に、空音が叫んでいた。


「そんな甘い事言ってたら、いつまた襲われたかわからないんだよ!?」


空音の言葉が胸に響いた。


「学校内にはもう秩序も法律も存在していない。1度襲い掛かって来た相手が更生することなんてないんだよ!?」


空音は大きな声でそう言いながら、泣いていた。


「空音……」


あたしは脱力し、その場に膝をついてしまった。


空音の言う通りだった。


この学校内はもう地獄と化している。


こんな状況で相手を野放しにしていたら、次になにを仕掛けて来るかわからない。