その感覚に身の毛がよだった。


普段の岡崎君に触れられるだけなら、きっと嫌な気持ちはしなかっただろう。


だけど、今は違った。


一度嫌悪を抱くと、それを取り除くのは難しい。


どれだけ優しく声をかけられても、あたしの感情は覆らない。


体の奥底から嫌悪感が湧いてきて吐き気を感じる。


今すぐ逃げ出したいという気持ちと、岡崎君を攻撃してやりたいという気持ちが入り混じっている。


岡崎君の手があたしの背中をなでる。


「やめて……!!」


声が掠れて涙が出た。


体育館でみんなと一緒にいることで、油断していたのかもしれない。


1人だって大丈夫だと、思い込んでしまったのかもしれない。


実際のあたしは男1人に勝つこともできないくらいに弱い。


岡崎君があたしを羽交い絞めにしたまま顔を近づけて来た。


唇がぶつかる!


そう思った次の瞬間だった。


「愛莉!!」


あたしを呼ぶ声が聞こえてきて、ドアから空音が入って来たのだ。


岡崎君が一瞬手の力を緩めた。


その瞬間あたしは岡崎君の体をめいっぱい押しのけた。