夜が来ていた。


あたしと空音は一度体育館を出て、生徒玄関でパンを食べた。


体育館にいるみんなは意気消沈していて、ぼんやりとその場に座っているだけの子が多くなった。


ウイルスに行動を乗っ取られるなんて、誰も考えていない事だった。


自分の意識がある状態で、自分の意思とは関係なく自殺や殺人を強要される。


それがどれほど恐ろしい事か想像もできなかった。


カーテンの布団の中に身を丸めて寝転んでいても、ちっとも眠気は襲ってこない。


それはみんなも同じようで、あちこちですすり泣く声が聞こえてきていた。


「空音……」


あたしは隣で眠っている空音にそっと声をかけた。


「なに?」


すぐに返事が来る。


やっぱり空音も眠れていなかったようだ。


あたしは布団の中で空音の手を握った。


「眠れないよね」


「そうだね……」


「少し、話をしない?」


「話?」


暗闇の中ジッと見ていると、空音の顔がしっかりと見え始めた。