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それから、森本先生は錠剤を田村先輩に服用させた。


田村先輩の顔色は相変わらず悪いままだったけれど、少し呼吸が落ち着いたように感じられた。


赤川先輩はそんな田村先輩の寄り添うようにして座っている。


その光景は見ているだけでも胸が苦しくなるものだった。


もし、今この状況で辻本先生の命が消えそうだったら、あたしは一体どうするだろう?


赤川先輩のようにずっと隣にいることができるだろうか?


好きな人が死んでいく様子を見ている勇気が、あたしにはあるだろうか?


「愛莉、さっきから辛そうだけど大丈夫?」


空音にそう言われて、あたしは「うん」と、小さく頷いた。


「田村先輩の事が気になる?」


「うん……」


頷く。


だけど、今は自分の命だって危ないのだ。


いつ感染している生徒たちがここに来るかもわからない。


「愛莉らしいね」


空音がそう言い、フフッと声に出して笑った。


「え?」


「いつでもそうだったじゃん。人のことばかり心配して、自分のことは後回し」


「そうだっけ?」