感染学校~死のウイルス~

ショートカットの彼女はあたしたちに気がつき、ゆっくりと近づいて来た。


とても小柄で可愛らしい子だけれど、胸に付けられている名札には3年D組と書かれていた。


とても先輩には見えなかった。


「これ、よかったら食べてね」


先輩はそう言い、華奢な手でカンパンを差し出して来た。


その手は傷だらけで、必死になって食料を確保したのだということがわかった。


その優しさに胸の奥がジンと熱くなるのを感じた。


「ありがとうございます。でも、あたしたちは大丈夫です」


あたしはそう返事をした。


先輩は少し戸惑ったように視線を泳がせる。


「実は、さっき少し食べたんです。朝ご飯の残りを」


空音が隣からそう説明した。


優しい先輩に嘘をつくのは忍びなかったけれど、みんながいる中で食堂にある食料の事は言えなかった。


「そうなの? 大丈夫?」


先輩は心配そうにそう聞いてくる。


「大丈夫です」


あたしはニッコリとほほ笑み、そう返事をしたのだった。