空音と2人で食堂内を調べると、思った通り十分な食料があることがわかった。


だけど、これを体育館へ持って帰ることはできない。


そんなことをすれば、また取り合いになってしまうだろう。


あたしと空音は今日の分の栄養を取るため、ここで少し食べてから戻ることにした。


調理室に入り、ステンレス製のテーブルに身を隠しながら、賞味期限の切れたパンを口に運ぶ。


普段なら絶対に口にしないようなそれも、今はとてもありがたいと感じられる食べ物だった。


「ここに食料がある事はきっと他の生徒も気が付いてるだろうね」


空音が言う。


「そうだね。少なくてもあの子を殺した犯人は食堂に入って包丁を盗んでる。きっと食べ物があることも確認してるよ」


あたしはそう答えながらも、怒りがこみあげて来るのを感じていた。


感染者を人間とは思わない。


それはあたしも同じようなものだった。


感染した人間は人を殺す。


恐ろしい化け物だと思っていた。


でも……感染者だって元々は杉崎高校の生徒だ。


一緒に勉強をしたり部活をしたりしていた仲間だ。


それをあんなにも残酷に殺すなんて……悪魔だ。


そしてその悪魔はこの校内にいる。


そう思うと身の毛がよだつ思いだった。