胸元は大きくはだけ、下着が足首まで下ろされている。


その胸元には包丁が突き立てられているのだ。


「こんな死体、見たことがない……」


あたしはそう呟いた。


今までは顔の原型がなくなるくらいまで攻撃された死体ばかりだった。


あちこちに血が飛び散り、性別も判断できないくらいだった。


でも、この死体は違う。


顔も体もほぼ無傷で、胸に突き立てられた包丁だけで絶命しているようだ。


「愛莉……この子の目、見て」


空音に言われてあたしは女子生徒の目に視線を向けた。


薄く開けられたままの目は輝くような赤色をしている。


「この子、感染者!?」


あたしは咄嗟にその場から飛びのき、両手で口と鼻を塞いだ。


「だけど、どう見ても自殺じゃないよ。これ、絶対殺されてる」


空音はそう言い、苦痛に顔を歪めた。