それは辻本先生が外へでてすぐの事だった。


準備室の方からガタンッと大きな音がして、みんなが一斉にそちらへ振り向いた。


凍り付くような空気が流れて行くのがわかる。


「今の音ってなに……?」


空音が聞く。


「わからない」


あたしはそう返事をしながらも、自然とバッドを手にしていた。


心臓は、辻本先生に頭を撫でられたときよりも更に早く打ち始めている。


さっきまで準備室には何もなかったはずだ。


物音が聞こえて来るはずがない。


あたしは恐る恐る立ち上がった。


「ちょっと、愛莉1人で行く気?」


「まさか、森本先生や田井先生についていくだけだよ」


体育館に残っていた2人の先生はすぐに準備室へと走り出している。


あたしはバッドを握りしめて2人の後に続いた。


空音はため息をつきながらもやっぱり中の様子が気になるのか、あたしの後ろについて来た。


「先生、バッド使ってください」


あたしは先頭を行く田井先生にそう言った。


「あぁ、ありがとう。危ないからあまり近づいちゃダメよ?」


田井先生にそう言われてあたしは「はい」と、小さく返事をした。