あたしの視線は倒れている生徒の下敷きになっている先生へと向かった。


そのふくよかな体はさっきからピクリとも動かない。


「これって……福田先生?」


空音が震える声でそう言った。


生徒が折り重なっているため、その顔は見えない。


辻本先生が倒れている2人にかけより、生徒の体を横へずらした。


そこから現れた福田先生の顔に、「ヒッ!」と、小さく悲鳴を上げた。


顔が、原型を留めないほどに破損している。


床に広がる血液は、ほとんど顔から流れだしたものだということがわかった。


あの女性みたいな悲鳴は福田先生のものだったのだ。


突然襲われて、逃げることもできなかったんだろう。


森本先生がどうにか生徒の脈を確認しはじめた。


生徒は気絶しているだけらしいが、その手にはしっかりとカッターナイフが握りしめられていた。


「目の色が戻ってる……」


生徒の目を確認してそう呟く森本先生。


人を殺したからウイルスが消えたんだ。


あたしはその場に膝をついていた。


全身から一気に力が抜けていく。


「愛莉、大丈夫?」


青い顔をした空音にそう言われ、あたしはどうにか「大丈夫」と、返事をしたのだった。