「あたしもそう思う」


いつの間にか後ろに立っていた空音がそう言った。


「こんな状況、誰にも予測できなかった。田井先生が逃げたのは正解ですよ」


森本先生が福田先生の体調を確認しながらそう言った。


「そう……ありがとう」


田井先生は笑顔を浮かべる。


「でも、どうやって体育館まで来たんですか?」


あたしはそう聞いた。


田井先生は職員室から逃げて、すぐに外へ出ようとしたそうだ。


そのときはまだシャッターは下りていなかった。


だけど生徒たちの事が気がかりになり、校内に残っている生徒たちを外へ逃がすように誘導していたそうだ。


その間にシャッターは閉まり、田井先生はここに取り残されてしまった。


それから先生は宿直室に鍵をかけて身を隠していたそうだ。


夜になり、校内が静かになったのを確認して見回りをするなか、体育館にたどり着いたそうだ。


「田井先生他に生徒たちは残っていたんですか?」


あたしはそう聞いた。


「わからないわ。あたしが誘導した生徒たちは全員外へ出たけれど、他にもいたかもしれない」


田井先生はそう言い、左右に首を振った。


田井先生が外へ出してくれただけでも、随分と違うだろうと思えた。


あと何人の生徒が校舎にいて、何人の生徒が感染しているのか。


それがわからないのが一番恐ろしいことだった……。