猫の湯~きみと離れていなければ~


「みにゃあんっ」

流が甘える声を出してリードを引っ張りだした。


流の目線の先には、副会長がたぷたぷのお腹を揺らしながらのっしのっしと歩いている。



嘘でしょ…
こんなときに黒猫が横切るなんて…


というかデリカシーってものはないわけ?


呆れを通り越して呆れてしまう。


副会長はわたしたちに気がつくとニヤリと笑って、あの独特な形のカギしっぽをピンと立てた。


ほらやっぱり。
絶対にわたしの心の声が聞こえているよね?




「あー、もう邪魔すんなよー」


陽向は恥ずかしそうにわたしを抱きしめている腕をほどくと、手に巻きつけているリードを緩めながら笑っている。


「そーいや知ってる? 猫のカギしっぽの秘密」

「ううん、知らない」

「幸運を引っ掛けて運んでくるんだって。だから長さんはいつも大漁だな」


……幸運を?


副会長の稲光型のカギしっぽは、確かに幸運をごっそりと引っ掛けていそう。


「本当。たくさん運んできてくれていたんだね」

「だろ?」


優しく笑っている陽向にわたしは思う。