「…あの日さぁ、泣いている鈴に何もしてあげられない自分が情けなくて。俺に力があればさ、鈴を悲しませずにすんだのにってずっと思ってた」
「それって、…引っ越しのとき? 」
「そう。あの鈴の姿が忘れられなくて。…こいつを助けれたのも飼えるのも、結局は父さんと母さんのおかげだろ」
陽向は流を捕まえると、後ろ足に絡んだリードをはずして地面に降ろした。
開放された流は飽きもせずにまた花びらを追いかけはじめだした。
「それにさ、鈴が会ってくれなくなったのは、俺を必要としていないからなんだろうなーって思ってた」
「…何を言っているの? そんなことあるわけないっ」
陽向が弱々しくて消えてしまいそうな気がして、わたしは思わず陽向の腕を掴んだ。
陽向は驚いたみたいだけど、すぐに微笑んでくれた。
でも安心しているんじゃない。
とても寂しそうに見える。



