猫の湯~きみと離れていなければ~


流とわたしはみんなの愛情をたくさんもらっていたのに。

でもわたしは閉じこもっていて、その愛情に気がつくことができなかった。


感謝と共にこれまでの思いが一気に込み上げてくる。


助けたよろこび、育てる楽しさ、傷つけられた恐怖、そして奪われた絶望


でも流が生きていてくれたこと、みんなが助けてくれていたことで、恐怖と絶望が浄化されていくような気がする。


―― ありがとう


わたしはそう言葉にすると、流の体に顔をうずめて号泣してしまった。






「落ちついた? 」

「…うん」


陽向は横に座ると、わたしが泣きやむまで何も言わずに側にいてくれた。

流はわたしの膝の上で器用に丸くなってくつろいでいる。


「まさかこいつが鈴を覚えているとは思わなかったよ」

「猫って忘れやすい生き物なんでしょ? 」


宮か倫がそう言っていたような気がする。


「それそれ。父さんなんて1週間出張に行ってただけで威嚇されたし。鈴のことは覚えていたなんて言ったら…」

「みにゃん? 」


流は顔をあげると陽向を見ながら鳴いた。


「お前は気にしなくていいの」


陽向は流を優しくなでて、眠りにつかそうとしている感じだった。