猫の湯~きみと離れていなければ~


「ナイスキャッチ! こいつ何をしてもトロいくせに足だけは速いんだよ」


やっと到着した陽向は、ぜーぜーと息を整えながらリードを手にしっかりと巻き付けた。

けれど流は飼い主なんて気にもせずにわたしにしがみついたまま。



「こんなに大きくなってる」

「だろ? 俺が面倒みるって言ったじゃん 」


『俺が絶対に面倒みるから』


そっか。陽向はあの約束をまもってくれてたんだね。


「でもどうして? 猫ちゃんは連れて行かれたんじゃなかったの? 」

「鈴母さんから保健所で子猫を引き取っていて欲しいって頼まれたんだよ。引っ越しが落ちついたら迎えに行くからって」


……そんなことが?



陽向は流のしっぽをぐいぐい引っ張って、わたしから引きはなそうと試みているけど、流はますますしがみついてきた。


「でもその間にこいつうちに馴れたし、俺たち家族も離れるのがつらくなってさぁ。…鈴、ごめん」

「どうして謝るの? わたしは感謝の気持ちしかないのに 」

「何度か鈴をびっくりさせそうとは企んではいたんだけどな。鈴、こっち来ないし、そっちにこいつ連れて遊びに行っても鈴はいないしで」


だからなのね。
あんなに陽向のことを細かく教えてくれるおしゃべりママが、流のことを、飼っている猫の話を全くしなかったのは。