猫の湯~きみと離れていなければ~


「あ、あそこで座ってろよ」

陽向は手を離すことなく境内に入ると中にどんどん進んでいく。


6年ぶりの場所。

記憶ではもっと大きい神社だと思っていたのに、以外とこじんまりしていて、猫ちゃんの段ボールを置いていた本殿の下も思ったより低くて狭い。

今のわたしでギリギリ入れそうなぐらいだから、陽向が入るのは絶対に無理っぽい。


「ちょっと歩かせすぎたよな。ここで待ってて」

「平気だよ? 」


気をつかってくれた陽向は、桜の木の下にあるベンチにわたしを座らせた。

そこだけ舞い落ちた花びらで敷き詰められていて、桜色の空間に浮かんでいるような感覚になる。


「病みあがりなんだから無理させれねーし」

「わたし平気だって」


足がすくんでしまったのを具合が悪いと思っているの?
どうして陽向はそんなに優しくしてくれるの?



「言うことを聞きなさいっ」


陽向はわたしを子供のように扱い、頭をなでながら笑っている。

その笑顔をずっと見ていたい。


けれど、恥ずかしすぎて目を伏せてしまった。