「…ごめん」
「行ったら絶対に思い出すはずだから。行こう」
ショックを受けているのは忘れられている陽向の方なのに、陽向はわたしを気づかうように笑ってくれた。
そしてわたしの手を握ると、鳥居の下まで引っ張っていった。
「陽向、わたしっ」
反射的に“拒否をしないと”って手をほどこうとしたけれど、陽向は離してはくれない。
「好きなやつがいるって嘘だろ」
振り返った陽向は真剣な顔していた。
どうして、そんな顔してそんなことを言うの?
突然のことに言葉がなにも出てこない。
「…鈴って本当、分かりやすいよな」
せめていつもみたいにニカッて笑ってくれたら
幼なじみの感情しかない人は平気でいられていいですね
って嫌みの1つでも思えるのに。



