「イギリス………」
「あれ?それも聞いてない?曾祖父母はフランス人だけど、住んでるのはイギリスだって」
「いや、それは前に……そうじゃなくて、やけに長いなと思って」
「あーー。紫音はかなりの曾祖父母っ娘だからね。
小さい頃から長期の休みはイギリスへ入り浸ってたよ。別の理由だけど、去年の秋まで…………いや…」

俺が感じた疑問に答えてた七聖がふいに言葉を濁した。


"去年の秋?"


「いや……まぁ…今のは紫音から直接聞いた方がいい」
「………………」

珍しく口ごもる七聖に驚いた。

「それよりも、だ。紫音の帰国が延びて、あと2週間は当然誤解中の紫音からの連絡は、まずお前には無いと考えるのが普通。
焦燥感に更けるのは勝手だが、後回しにしてた“身辺”、ケリを着けるにはちょうどいいんじゃないの?
煌暉がなかなか先へ進まないのは意図的に予防線を張ってるんだと俺は思ってたけど」

七聖の核心をつく言葉に俺は納得せざるを得なかった。


"俺の女に対しての今までの付き合い方。それを彼女が知ったら……"


「嫌われるかもしれないという恐れ(虞)はあるだろうけど、過去もお前の一部で、それがあるから現在(イマ)のお前がいる。
それに、紫音はそんなことで判断するような女(コ)じゃないよ。
本当に純粋で、人の本質を見抜く力を持ってる。良いとこはもちろん、悪いとこもちゃんと認めてくれる女(コ)だよ。
マジでいい女。弱冠14才にして末恐ろしさを感じるね。
イトコじゃなきゃマジで口説いてるわ。……あ、イトコって結婚出来たよな、確か」