「煌暉がそんな風になるのは初めてね。でも、煌暉がそれを選んだのならそれは揺るがないものでしょ?
それに、今が煌暉にとって試練なら、それは神様が与えたこと。“乗り越えられる者”にしか神様はそのチャンスはくれないのよ。
人としての成長には欠かせない、“難が有る”ということを“有り難く”受け止めなさい。
それが煌暉を笑顔にしてくれるはずだから。
結果はどうであれ、踏み出さないことにはそれさえも手に入らないのよ」

さっきと同じ真っ直ぐな視線が俺にまた向けられ、人生を俺の倍以上生きている母さんが言った言葉に、俺の中にあった“わだかまり”がリンクした。


“長いものには巻かれよ”


頭の中に浮かんだ言葉に俺は、自分の臆病さに完全終止符を打つことを心に決めた。


だけどすでにこの時、何よりも大切にしたいものが再び離れようとしていたことを、俺は数日後に知ることになる。