「あ、そうそう。しばらく帰り遅くなるから。
夕食大丈夫よね?母さんの分も置いといてよね」


少しの間のあと、帰ってきた時と同じ機嫌の良さに戻った母さんが、当たり前のようにそう告げる。


"作れってか?いや、作れるけど…"


そもそも放任主義の両親だから、男といえども父親を始め、俺達兄弟三人共が家事全般出来るわけで、その父親も今は海外だし、母親はこんな感じ。兄貴達は高校を卒業と同時に家を放り出されていた。それは俺も同じで、2年後の今頃はこの場所にはいないだろう。


"つか、態度変わんの早くね?"


「仕事?しばらくって、どんぐらい?」
「んーー?天使だから期間未定」
「はぁ?意味わかんねぇんだけど」
「秘密が多いってワクワクする♪」
「聞いてんのかよ……」
「え?何か言った?」
「なんもねぇよ」

いつものことだけど、奔放な母さんとこれ以上話を続けるのが今の俺には面倒に思えて、俺は早々に離脱する。

だけどやっぱり、母さんは母さんで…

「何よ?今日はやけに切り上げるの早いじゃない。つまんないわね」

俺の様子が面白くないのか、茶化してくるけど……

「………………」

「まぁいいわ」

俺の無言の返答に、案外あっさりと解放してくれた。