SHRが終わって1限の授業のなか、俺は窓の外へ視線を投げて、その先にあった中等部の校舎を見ながら昨日の屋上でのことを思い出していた。


逆光に浮かぶシルエット。
凛とした後ろ姿。
背中まで流れる髪。
甘く響く声音。
そして…タイの色。


それらはつかの間の記憶なのに……
なぜか、俺の脳裏に焼きついて離れなかった。

特に白ラインの入ったえんじリボンタイは、距離があったにもかかわらず、その色を鮮明に俺の目に映し出した気がする。

俺の見間違いでなければ、中等部3年の女…

俺とは2学年しか違わないのに、女と呼ぶにはまだ早い気もする…だけどそれは、義務教育というボーダーラインがそう思わせるのかもしれない。

それでも俺が感じたのは、女子よりも“女”という印象だった。


知りたい。
ただそう思うこの感情は何だ…?


女に対して、今まで何も感じなかったのに…
あんな女がいたなんて…


甘い声音に滲んだ切なげな色。


……泣いているのかと思った…