私は胸に手を当てて、その内にあるであろう光の灯りを感じるためにキュッとそれを握り締めてみる。

形の無いものだけど、確かにそこにある光。

陽だまりのような優しいあたたかさが心の中を満たしている。

私はどこを見るわけでもなく、ボヤッとした意識のなかで、その何も映してはいなかった瞳をゆっくりと閉じた。


瞼のうらに浮かんだ姿。

私に優しく微笑みを向けてくれる先輩。

その姿が私の名前を呼んでくれる声までをも響かせてくる。

私の中で先輩の存在が、いつの間にかこんなにも大きくなっていたことに私の心が気づいた。


私は閉じていた瞳をまたゆっくりと開き、今度はちゃんとその瞳が映し出した光景を見つめる。

それにはさっき私に声を掛けてくれた人達の後ろ姿が映り込んでいて、その人達が何か楽しそうに話しながら遠ざかって行くのがその瞳を通じて伝わってきた。


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“やっべ。マジ超可愛ぃわ”
“最近声も掛けやすくなったしな”
“…俺、告ろうかな”
“バーカ。相手にされないって。つーか、男いるじゃん”
“あー……2年のヤツだっけ?”
“そーそー。初め聞いた時はまたかよって感じでムカついたけど…”
“イケメンは得だよなぁ”
“今は他で喰ってねぇって?”
“当然だろ。よそ見してたらヤバくね?”
“つか殺す”
“いやいや姫相手に余裕なんて1ミリも無いだろ”
“狙ってるヤツクソホドいるしな”
““言えてるーーーっ””
“““…………………”””
“““やっぱムカつくわーーーーっっ”””


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