「ねえ。まだつき合ってないんだよね?
もう暗黙の公認なんだから、早くくっついちゃえばいいのに」
『アハハッ 何それ。暗黙の公認って…フフッ
でもそんなんじゃないよ』


"なぜ否定…"


「えーーっ、でも一先輩は紫音にメロメロで丸出しじゃん」


"大好きオーラハンパないっての"


『そうかな?そんなの感じたことないけど』


"マジですか…このコは……"

"それより…何やってんだあの男は(怒)…ったく。
あれだけ恋人同士の雰囲気出しててまだ言ってないだとぉ(怒)
相変わらず紫音はこの調子だし。
何かイライラしてきた…(怒)"


目の前の紫音が視線をスマホに落としてそのメールを確認している姿はとても愛らしい。

微笑まれた口元に文字を見つめる瞳の色は優しげで、元々の可愛さ以上にキレイだ。

恋をすると変わるって言うけど…

「紫音は一先輩のこと、どう思ってるの?」


"今さらだけど…"


『え?』

私を見上げてきた紫音の頬にポッと朱の色が染まる。


"だよね。いや、わかってたけど"


『どうって……』
「好きでしょ。先輩のこと」
『やっぱりそうなのかな……?』


"自覚なしですか…"


「一緒にいて楽しい?」
『うん。……心がね、……あたたかくなる気がする』
「そっか」

二人のキョリに焦れったさはあるけど、二人には二人の速度があるんだろう。

でも………


"先輩…早く紫音をつかまえて。早く……早くその心を…紫音の全てを包んであげて……"


焦る気持ち。


どうしてそんなことを思ったのかわからない。

だけど……このあと紫音に起こることを私は予感していたからなのかもしれない。


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