「ねぇ、さっきのって“電話するよ”ってことだよね」

私は教室へ戻ってくると、さっき見た光景で思ったことを紫音に聞いてみた。

『ん?あー違うよ。たぶんメールだと思う』
「そうなの?普通に“電話”って意味に見えたけど」


"一先輩の左手の仕草。あれはどう見ても“電話”のジェスチャーだ"


『んーー。でもきっとメールだよ』

紫音がそう言った途端、震え出した紫音のスマホ。
そのまま紫音が私に抵抗なく見せてくれた画面にはメール着信の表示。そこには“一先輩”の文字が並んでいた。

『ね?』

一言だけ言って紫音はゆるく微笑んだ。