そう言われて自然と下りた俺の視線。

暑さも本格的になった今、夏服に移行したということもあり、合いに着られていたベストジャケットを脱ぐ女子がほとんどなのに、彼女はまだそれを着用している。

彼女は以前に暑さをあまり感じないと言っていたからてっきりそれが脱がない理由かと思っていたけど……

いや、実際それが理由なんだろうけど……

聞いてしまった以上、男なら多かれ少なかれ気になるのはその大きさで…
俺は彼女がそれを脱がない理由をもう一つの理由に結びつけて、その隠れた場所から目が離せなかった。

その彼女といえば、目の前に広がる料理に釘づけなのか、視線はそれらに注がれたままで、自分が言ったことに気づいていない様子だった。もし気づいていたなら今頃は顔をまっ赤にまた染めてるはずで……

だから俺の視線の先にももちろん気づいていないはず。

『取り皿もらいますね』

やっぱりどちらにも気づくことなく、店員を呼ぶためにその視線を上げた。

その動作に慌てて俺も彼女と視線を合わせる。

少し不自然に見えたかもしれないと思ってちょっと焦っていると、

『どうかしましたか?』

案の定、彼女に聞かれてしまった。

だけどここで考えていたことを聞くわけにもいかず、思わず視線をそらしてしまったことが、また彼女の俺に対しての観察力に触れてしまい、

『やっぱり好きな物頼みたかったですか?』
「え?」


"そっち?"


男の心情に少しも気づかない彼女に俺は内心ホッとして、的外れな質問に気も抜ける。

「あー、いや。そうじゃないよ。
嬉しそうな月瀬さんを見てて俺も嬉しくなってただけ。
誘って良かったよ。本当に」

咄嗟に出た言葉とはいえ、自分で自分に関心する。

今の言葉はもちろん本当にそう思ったことだけど、この時に限っては鈍い彼女で良かったとも思う自分がいた。


「じゃあ食べるか」
『はい』


"それにしても気になる……"