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『先輩、この間は本当にすみませんでした』
「いいって。今日こうして来てんじゃん」

メニューをオーダーしてそれを待っている時に、先日のことをまだ悪いと思っているのか、謝ってくる彼女に笑みがもれた。

『でも顔を見て謝りたかったんです。
テスト期間はお会い出来なかったし、今日きちんと謝りたくて』
「そっか。ありがとな」
『それと……』
「ん?」
『前に先輩が言ってたことがよくわかりました』
「俺?」
『電話に出ないことを気にして欲しいって…』
「電話?ぁあ……」

俺はその時のことを思い出して苦笑がもれた。


"あの時は考えなしに言ったことで、自分の首を自分で絞めたんだよな"


結局その理由を答えれなくて、そんな自分に呆れたんだった。


『私も同じでした。
…急なことだったとはいえ突然キャンセルしたのに、その理由を何も聞かれなくて……“わかった”って……
それが何だかその……』

その言葉の先を言いにくそうにした彼女を見ていると、可能性に期待した思いが口をついて言葉になった。

「気にして欲しかった?……」

思わず確認するような聞き方になってしまったことに、自分がどれだけ彼女を欲しているのかを再確認してこみ上げた切望。
俺は湧いた感情を抑えるように口元を手のひらで隠した。

「………んなわけないよな」
『どうしてわかるんですか?』
「え?」

思いもしなかった言葉が彼女から聞こえて、一瞬自分の耳を疑った。

『どうして聞いてくれないんだろうって思って……』
「………………」


"ちょっと待って。ヤバいって。
そんな風に言ったらマジで期待すんだけど……"


『メールにただ“用事”と書いたことを後悔しました。
先輩が理由を聞いてきてくれるとばかり思ってたから……
だから返信メールの内容を見た時、寂しくなりました』


"マジヤバい。
……この間の勉強会の時ももしかして気のせいじゃなかったのか?"


そう考えたら取り繕ってたように思えなくもない。