いつになく饒舌だった七聖はそこで話を区切った。

その話で彼女のピアノ奏者時の姿を七聖は知っていることがわかって、俺の中にやっぱり芽生えた嫉妬心。

そう話した七聖の顔を見れば、俺への挑発だとわかったけど、すでに芽生えたものを押さえることなんか出来るわけがなく……

「俺は知らねぇのに…七聖がいろんなことを知ってるのがムカつく」

イラついたはずが、何とも情けないつぶやきとして声に出た。
俺の意外な態度と口調に七聖の口がだらしなく開かれて、呆然とした顔になる。

よほど意表をついたらしい。

「おまっ……俺の範疇を超えてんだけど」
「仕方ねぇだろ。彼女と過ごせば過ごすほど持ってかれんだから……」
「……紫音も例外じゃないのか」

俺の言ったことにボソッとつぶやいた七聖。

「え?」
「いや……嬉しさゆえに俺は複雑な心境だな」
「意味わかんねぇ」

七聖が苦笑しながら少し寂しそうにした表情が俺の脳裏に焼きついた。

「そうだ。
お前のために心優しい俺からの忠告っていうか、命令?
血迷っても紫音を見に行こうとか思うなよ。
ああ見えて怒らせると恐いからな。ヘタすれば1週間…いやそれ以上だったか、口聞いてもらえなくなるぞ。
大袈裟じゃなく、“経験者は語る”だ。
それに耐えられるとは思わないけど…チャレンジしてみる?それはそれで俺は楽しいけど」

忠告=命令+(プラス)最後に茶化した七聖が不適な笑みを浮かべたことで、彼女が俺に教えてくれなかったことの理由を悟った。
実はこっそり見学しに行こうかな、なんて、七聖が話してた時点で考えていた俺だったけど、その先に待つ空虚な日々を想像して、一切合切の冒険心を取り払った。


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 わかった。

 大丈夫だから気にせずに用事をこなして。

 テストが終わったら“おつかれさま会”
 やろうな。

 楽しみにしてるよ(*^ー^)ノ♪


                煌暉

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