┌───────┐
 from 月瀬紫音
└───────┘
┌─────────────────┐

 こんにちは。

 今日の約束ですが、
 ちょっと急ぎの用事が出来てしまって
 守れなくなってしまいました。

 突然ですみません。

 先輩のおすすめのカフェに
 行ってみたかったのに
 とても残念です。

 また良ければ誘って下さい。

 本当にごめんなさい(>_<)


               紫音

└─────────────────┘

彼女からのそのメールが届いたのは5限と6限の間の時間。
今日は期末前の息抜きをしようということになっていて、甘党の彼女にピッタリのカフェへ行こうと思っていた。


「用事って何……」

メールの画面を見たまま思ったことが声に出た。

それが聞こえたのか、前に座る七聖が俺の方へ振り返ってきた。

「何か言った?」
「いや…」

俺はつい否定したけど、七聖は俺の様子をすぐに察知して、

「紫音が何?」

それを“=彼女”と結びつけてきた。

「………………」
「わかりやすいって言っただろ」
「七聖って俺に反応……してるわけねぇか。…俺を通して、彼女に敏感だよな」
「否定はしないけど。あえて言うならどっちもだな。
煌暉は俺の趣味だし、紫音は俺の大切なコ」


"趣味って……“からかう”が抜けてんだろうが…"


ハアッと心の中で溜息をついていると、七聖は何か考えるような仕草で言葉を続ける。

「キャンセルされた?」
「!?」


"何も言ってねぇのに…つか何か知ってんのか?"


「朝家を出る時に母さんが慌ててたからさ。期末前なのに、って」
「それって…」
「紫音に対してで、多分ピアノ奏者の急ぎの依頼かもな」
「よくあんのか?」
「んー……あるな。基本はヘルプだけど、紫音のファンは多いよ。店側がその紫音をシークレットにしてるから通いつめてる客は少なくないはず。
中でも緊急的に紫音へ依頼するぐらいだったら常連も常連で、今日の客は上玉の特別かもな。
まぁ特別って言ってもよっぽどでない限り接触はないから。母さんもそれは徹底してるし、紫音は英語しかしゃべんないよ。それに見た目も外人だし。っと…しゃべり過ぎた」