そんな願いが言葉となって、つい口から漏れ出てしまった。


『一先輩が傍にいてくれてよかった』


「え!?」

また驚いた一先輩の顔が私の目に飛び込んできて、

『え?』

私はおうむ返しに聞き返してしまった。


そこでまたハッとする。


"やだ……私さっきから何言ってんだろ…
思ってることが全部声に出てるとか……恥ずかしすぎる…"


「それって…」

一先輩が驚いたままの様子で一言つぶやくのが聞こえ、私は羞恥に思わず、

『数学が苦手なので、教えてもらえてとても助かります』

この場の状況を言い訳にして取り繕った。


「あぁ…そういうことね。……だよな」

フッと口元をゆるめて伏せられた先輩の瞼がまたすぐに持ち上げられてそのまま視線となる。
そしてその先にあったワークにそれは落とされた。

「月瀬さんにならいつでも、いくらでも教えてあげるよ。
ただし、俺がわかる範囲だけどな」

ハハッと笑った一先輩。

『ありがとうございます』
「ん。そこの問いはそこに書いた公式でやってみて。
またわからなくなったら、聞いてくれたらいいし」
『はい』

その会話を切り出しに、私はまたワークへと向き直った。