「土岐くん…彼女と知り合いなの?」

私へ質問してきた人が私と七聖くんを交互に見て、戸惑いを残しながらも七聖くんへ問いかけた。

「妹ですよ」


"!?"


躊躇なくそう答えた七聖くんに、私の目が丸くなるのが自分でもわかった。


"隠してたんじゃないの?"


「え?でも名前違うよね」

当然湧く疑問。

「それが何か問題でも?」
「問題っていうか……」
「おかしいですか?俺と彼女が兄妹だと。
何なら他の質問にも答えますので聞いてくれていいですよ?」
「「……………………」」

『……………………』

七聖くんにそう言われた二人が沈黙して、その淡々と話されることに呆然としている私。

表情の変わらない七聖くんに三人とも押し黙っていて、

「聞かないんですか?聞きにくいんでしたら別に俺じゃなくてもいいので、煌暉にそれも聞いて下さい」

七聖くんが続けた言葉には未だ冷たい音が含まれていて、

「ちょっとヤバいって……本人が妹って言ってんじゃん。
このコにも確認したってバレたら、今の煌暉なら確実キレるよ」

さっき私と目線を合わせていた人がもう一人の人へ耳打ちしたことで、その人はそれに対して小さく頷いた。

「ごめんね、月瀬さん。
ちょっと興味があったの。煌暉をマジメにしちゃうコがどんなコか知りたくて。
だから“花姫”と呼ばれるあなたと話してみたかったの。
大して話せなかったけどね」

そう言ってチラッと七聖くんを見やった。


"マジメ?花姫?………?"


何のことを言っているのか私にはさっぱりわからなかったけど、最後に言われたことが私を嬉しい気持ちにさせてきた。

「だけど、あなたならわかる気がする。不思議ね、あなた」

さっきまでの戸惑いを消して、その人は私へ微笑んだ。

「あーーーっ、煌暉よりも早く話しかけてみるんだった。
そしたら私が守れたのに」
「本当に。あの様子だと絶対近づかせてくれないよ」

なぜか悔しそうな表情の二人の言葉がまた私へと嬉しさを運んでくる。

『あの……意味がよくわからないこともあるんですが、それはその……またお話して下さるって思ってもいいですか?』

勝手に私の口が願望を声に出した。

「「へ?」」

私の言葉が意外だったのか、驚いた様子の二人が私を凝視してくる。

『いえ………お嫌じゃなければですが………』

私は上目使いに二人を見上げ、語尾が小さくなってしまったあと、今まで自分が座ったままだったことに今更ながら気づいて失礼を詫びるために立ち上がった。

『すみません。座ったままで……大変失礼いたしました』

そう言って私はペコッと頭を下げた。