"昨日の先輩…何だかおかしかったな…
突然カミングアウトをしたかと思ったら、そのまま深刻な顔で何か考えこんでたし…そのあとの私の話にも少しイライラしてた気がする。

…私が他の先輩達と話してるのを嫉妬してくれたのかな…
……まさかね"


“いい先輩でも、迷惑でもないけどな”


"あれはどういう意味だったんだろう…"


私は一先輩と待ち合わせをしている場所で、ボヤッと昨日のことを思い出していると、私の目の前に突然立ちはだかった影に驚いた。


「月瀬紫音さん」


私を確認するように名前を呼んだ声に私はその人を見上げた。
そこにいたのは高等部の女生徒二人で、座っている私を当然見下ろしている。リボンタイの色で高等部ということだけはわかったけど、そこにあったラインの色が一先輩と同じじゃないことが私に学年まではわからなくさせていた。

『はい』

それでも私は名前を呼ばれたことに返事をした。

「へぇ。噂通りね」


"噂?"


「あなた煌暉と付き合ってるの?」


"こうき…一先輩のことかな?"


「ちょっといきなりじゃ……怖がってんじゃない?」
「何でよ。まだ聞いてるだけじゃない」
「まだ、って…何かする気だったの?」
「なっ……しないわよ。言葉のあやでしょ」
「怪しい……」

私の目の前でされている会話のやり取りの意味が私にはわからなかった。
だけど、ここ最近の私へ話しかけてくれる人達の内容と、今聞かれたことが似ていたので、やっぱり一先輩のことを言っているんだと思った。

『あの…』

私はおずおずとまだ言い合っている二人へ声をかけてみた。