PM7:00頃に彼女を自宅であるマンションまで送り届け帰宅した俺は、自室の机の前に座り、ついさっきまで彼女の隣で過ごしていた時間を思い出していた。

意外にも近かったお互いの家。

そんな些細なことにも嬉しくなる。

駅前に建つ彼女のマンションから俺の家までは、歩いて20分程の距離だった。


今日の“寄り道”=俺的には“デート”でいろんな話をした。


趣味はピアノを弾くこと。そして歌うこと。
ピアノは母親に教わって、その母親はもう他界していて今は父親と二人暮らし。
時々ハウスキーパーの人が来ること。など…

多忙の父親とはなるべく時間を共有していて、毎日の送迎もその内の一つ。
朝はほぼ毎日父親に送ってもらい、帰りはその父親付きの運転手が迎えに来る。
それを過保護だと笑っていたけど、彼女はそれをとても嬉しそうな表情で話していた。


"父親の心中を考えると納得だよな"


その彼女といえば全く自分のことには無頓着で、今日だってどれほど自分が周囲のヤロウの視線を集めていたかなんて気づきもしなかった。

俺は雑誌でたまに顔を出しているせいか、そのことで俺に声をかけてくる女達はいたけど、その女達をも魅了させていたことや、彼女をカメラで納めようとしていたヤツらのことも…
それを阻止するために俺が度々立ち位置を変わったりしていたことにももちろん気づいていなかった。

ただ不思議そうにして、俺を見上げてくるだけ。

でも楽しそうに笑う彼女に俺が何か言えるわけもなく、心が持っていかれる始末で…

あと驚いたことに、俺が彼女を待っていた時に見つけたカフェが実は七聖の母親、つまり彼女の母親の姉である叔母がオーナーを努める店だったこと。

七聖からは母親が何かの店を経営してることは聞いていたけど、まさかその店だったとは知るよしもなく…

そんな七聖の母親とは仲も良く、時々休日を一緒に過ごしたり、頼まれて緊急時にのみその店でピアノを弾いていることは俺を特に驚かせた。

中学生ということもあって、一般的にバレると面倒だから、少し変装してるって言ってたけど…
そこはどんな感じなのかは教えてくれなかった。
そうなると余計に知りたくなるのが当然で…

“盗み見”といういたずら心が芽生えるけど…


"いつ助っ人で入るかもわかんねぇしな"


もっと近づくことが出来ればそれも知ることが出来るんだろうか…