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二人並んで歩く。

隣にいる彼女を見下ろせば、
雲の合間から漏れる日の光に照らされた髪が透けいるようにその光を映しこんでいる。

もともと明るめの髪色が、より鮮やかに輝いていた。

「髪…キレイだな」

その髪を見ていた俺は、自分の目元が細まりつい思ったことが声に漏れ出た。

『そうですか?』
「ん。光が溶け込んで金色になってて…すげぇキレイ」

俺が笑顔を向けてそう言えば、彼女の顔がみるみるうちにまっ赤に染まり上がった。


"何、その可愛い反応"


『ありがとう…ございます…』

彼女は少しうつむいて、赤く染まる頬の片側を隠すように右手を添える。
追いうちをかけるような仕草を見せた彼女に、俺の想いがいっそう深まる。


"抱きしめたいんだけど"


俺は唐突に変態的なことを言ってしまいそうになり、グッと奥歯を噛み締めた。

「月瀬さん」

自分の名前を呼ばれ、そのままの仕草で横から俺を見上げてくる彼女は…


“天然小悪魔”


万人を虜にするのはその容姿や声だけじゃないよな…


"ハァァァ……"


俺は胸の内で溜息をこぼした。


「前話してた本屋行くだろ?」
『はい。ぜひ』

彼女は目を細めてニッコリ微笑んだ。

そんな彼女に俺は、このあとの“寄り道”の間中ずっと理性を総動員させて耐え忍ぶことになったのは言うまでもなかった。