**


俺がそのHPを食い入るように見ていてどれぐらい経った時か、ふいに自分の足元に入り込んだ2足の靴が見えた。

反射的に落としていた視線を上げると…

『来て下さったんですね』


"来ないわけないじゃん"


目の前に現れた彼女が、いくら目につきやすい場所に俺がいたとはいえ、その俺を見つけてくれたことに嬉しくなる。その感情に胸が息苦しくなるほど甘美な想いが押し寄せてきた。


『お待たせしてしまって…
七聖くん…何も教えてくれないから』


待たせたことが気になるのか、少し眉尻を下げた彼女。
でもそのあとに続けられた言葉にはちょっとムッとした感じが含まれていて、その顔にも同じような色を浮かべた。

『でも良かった』

直後、ふわりと笑った顔に俺の目が釘づけになった。

『ブレザー…今日は着てないんですね?
でもカーディガンもよくお似合いです。フフッ』

そう言って、彼女はさらに笑みを深めた。


夏服への移行期間となっているこの時期、俺は正規のブレザーは着用せずに、Yシャツの上に薄手のカーディガンを羽織っていた。


「……………」


"俺…ヤバいかも…"


『一先輩?」

彼女が俺の心中などわかるはずもなく、黙ったままの俺にキョトンとした表情で首を傾げる。


"心臓もたねぇ………"


くるくる変わる彼女の表情を目に映すたびに、想いの熱が上がる。
俺は全身に駆けめぐろうとしているそれを逃がすため、彼女と合っていた目を一瞬そらして首の後ろへと手をやった。

「そんな待ってないし、大丈夫。
それとブレザー…暑くなってきたしな。って言ってもYシャツ一枚になるにはまだ肌寒い時とかあるし…今日からはこれにしてみた」

俺は説明しながらそらしていた視線を彼女に戻した。