「はい。佐生碧です」
"何で自己紹介…"

「ハハッ ごめんな?
月瀬さんの友人なら今後ともよろしく?的な?」


"軽っ"


私の不機嫌さを察知したのか、一先輩は苦笑している。

「俺は一煌暉」
「よく存じ上げてます」

嫌味含めて言えども、一先輩はおかまいなしで、

「あ、月瀬さんに自己紹介してなかったな」

なんて微笑みながら紫音を見つめてる。

『フフッ 私はさっき聞きましたから』
「え?そうだっけ?」
『はい。あそこで』

紫音がさっきまで座っていた場所を見た。

「あぁ、七聖ね」

私は一先輩が出した名前に聞き覚えがあり、記憶を巡らした。


"あ、そっか。紫音がたまに“七聖くん”と呼ぶ秘密のイトコだ。
クールなイケメン。
確か……土岐(とき)、土岐七聖"


「まぁ俺自身からはまだだし…
改めて、一煌暉です。高等部2年特1。よろしくな」
『はい。
中等部3年A組の月瀬紫音です。こちらこそ、よろしくお願いします』

二人が今さらな自己紹介をし合うのを呆気にとられて見ていると、

『こちらは私の大切な親友の佐生碧さんで、同じ中等部3年A組です。
碧とは父の仕事関係で10才の時に知り合ってから仲良くしてもらってるんです。ね?』

紫音は何とも丁寧に、もう一度私を一先輩へ紹介してくれた。
とびきりの笑顔つきだ。

その無防備な笑顔にまたしてもヤラれた私は、紫音の腕にギュウッと絡みつき、

「はい。とっても仲良しなんです」

ニッコリ笑って一先輩へ言ってやった。

一瞬呆気にとられた一先輩は、また苦笑して、

「ハハッ まいったな」

と、言葉をこぼした。


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