AM7:00
pipipipi pipipipi…


『ん〜〜…』

気だるげな声を出し、その音源となるものへ手をのばす。

『……ねむ…い…』

チラッと時間を確認し、もう一度夢うつつとなりかけた時、

コンコンッ

「紫音(しおん)」

ノックと共にドアの向こうから私を呼ぶ声が聞こえてきた。

『ん。起きてる』

私は重い瞼を持ち上げて、短く、眠気の残った声を返した。
その言葉を合図にドアが開く。

「おはよう」

声の主が私の元へと近寄ってきて、ベッドへ腰を下ろした。

『おはよう、パパ』
「今日は朝一で大事な会議があって、パパはもう会社へ行くから、学校まで送って行けないけど、気をつけて」

パパの大きな手のひらが私の頭を優しく包み込む。

『ん。パパも気をつけてね。行ってらっしゃい』

そう微笑んで返せば、パパはニッコリとした笑顔で私の額にキスを落とした。

「行ってきます」

パパを見送りつつ、上体を起こす。手を組み、大きく伸びをして、グッと背筋に力を入れて息を吸い込んだ。

『さぁ、支度しなきゃ』

私はベッドから立ち上がり、クローゼットから制服を取り出して、それに着替えていく。
ブラウスの襟にリボンタイをかけて、蝶々結びにしたところで、ふとその横にあるキャビネットの上へと視線を移した。

『あ……。これ探してるよね』

ポロッと無意識に漏れ出た声。
そこへ置かれていた物へと手をのばす。

制服のネクタイ。

少しの間考えて、おもむろに、腕に抱えていたブレザーのポケットへとそれを入れた。

『高等部の人みたいだし、…先生に預けたらいいよね』

私は声に出しながら、自室を後にした。


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