「終わりって…なんか腑に落ちねぇ」

これ以上聞いても七聖が答えないことは知っている。
それなのに、

「煌暉が見つければいいじゃん」

仕方なくなのか、苦笑しながらそう言った七聖の意外な課題ともとれる言葉に、俺の目が丸くなった。

「見つければって…そんな簡単に…」

呆れて言葉に詰まる。けど、ふと七聖のその言い方に俺の勘が働いた。

「え?…この学校?」

咄嗟に出た俺の言葉に、七聖は挑戦的な視線を向けて、

「さぁな」

フッと微笑んだ。


"へぇ……ここにいんのか。
七聖が大事に思う女……会ってみてぇな"


俺は単純にそんなことを思った。


"会ってみたい…か"


その言葉によぎる姿を思い浮かべていると、

「で?話逸れてたけど」

“ふりだし”に戻された会話。


"あー…忘れてた。…つか、聞き方知らねぇのかよ"


七聖のその聞き方に俺は心の中で苦笑する。

「で?って何?」

七聖の言わんとすることなんて百も承知だが、俺はわかってないふりをしてその言葉を繰り返した。


「ハハッ 収穫?」
「………」


"相変わらずわかりにくいヤツ"


クセのある物言いには慣れてるけど、からかう時に強く出るそれは今まさにその時で…


"俺がさっきまでどこへ行ってたかなんて見透かしてんだろうが…"


「あぁ、……中等部の女子」

苦笑さながらも、俺は答えた。

「へぇ。……中等部。……まさか見られてないよな?」
「……それは、…ない」

七聖の表情が一瞬厳しいものになった気がして、とぎれとぎれに出た言葉。


"イラついてる?"


「仙ちゃんのことだし、クギは刺されたんだろうけど……
間違っても興味持つとかやめろよな」

珍しく忠告してくる七聖に、俺はなぜか違和感を感じた。

「気まぐれで相手するとか、かわいそうだろ」


"あぁ…そういうことか…"

"……本気ならいいんだろうか…"


違和感に納得したはずなのに、なぜかまたそんなことを思った俺は自嘲気味な笑みがもれる。

「わかってるって」

自分に言い聞かせるように、七聖にそう答えた。
さすがに俺でも、顔も知らない、ましてやまだ中学生相手にどうこうなるつもりはない。…はず。

そこまで考えてハッとした。


"どっちも“知らない女”……だよな"


甘い声音の女も中等部の3年。
ただ無性に気になり、知りたいと思った女。

知ったところで、俺はどうしたいんだ?

いつもみたいに適当に遊ぶ?
わざわざ自分から動いて?
忠告されてるのに?

違う。
本当はそんなこと微塵にも思っていない。

囚われたこの感情は…


恋…なのかもしれない。


あんな一瞬で。
それこそ顔も名前さえも知らない女に。


"ありえねぇ……"