月夜の空に広がる無数の星。

その中でひときわ光り輝く一星を見つめている紫音。


二人の手のひらを重ね合わせ、この場所に今は二人で溶け入り、静かに流れる時間に身をまかせていた。


『♪♪♪♪~♪~♪♪~♪♪………


ふいに紫音が歌を紡ぎ出し、一星から隣にいた俺に視線を移してそのまま見つめてきた。

それに応えるように俺も紫音を見つめ返す。

その歌は途切れることなく奏でられていて、紫音はまた一星へとその視線を移した。

その時にゆるめられた目元とつないだ手はキュッと力が込められていて、その所作と歌が亡き母に紫音が何かを伝えているように俺は感じた。

今奏でている歌は俺が初めて紫音を見つけた時とさっき見つけた時と同じものだったけど、その時それぞれにあった切なく泣いているような声音じゃなくて、またそれとは違った別のものがそれに乗せられていたから。

だからきっと、今までの想いと今の想いを母に伝えているのかもしれない。

だから俺もその視線を辿るように、二人の頭上に広がる夜空を見上げた。



「紫音を俺に会わせてくれてありがとう」



紫音の母に伝えるように俺もまた、そこに浮かんだ一星を見つめながら感謝の想いを声に出した。