不意に鳴る着信音は心臓に悪い。

ジャージでソファーに寝転んでいた私はビクリとしてしまいました。

午後の緩やかな時間、小説を読んで過ごしていたらつい集中してたみたいで。

ノロノロと携帯を手に取るとメールが一件。

駿河監督から。

前のメールから一週間放置してしまいました。

画面には『明日、暇ですか?』

タイトルも無し。

少し考えてメモリーから『監督』を捜索。

エイっ!と発信ボタンを押す。

1、2、3コール目で繋がる。

『はい、駿河です。』

渋い声だ。自分も役者すれば良いのに。

「鈴里です、今大丈夫ですか?」

淑やかに淑やかに。

「ええ、メールの件ですね。」

そりゃそうです。

「明日は特に」

「デートでもしませんか?」

監督の痩せた髭面を思い起こし、失礼ながら少し吹く。

「ダメですか。」

メールなら右下がり放物線矢印(青)が入る所かな。
「いーえ、嬉しいです、でもまだ決まって無いから出演交渉込みなら断りますよ。」

「目的の1割を失いましたがそれでも価値大ですね。」

おや。

「嬉しいです。」

「昼飯からどうです?」

夜かと思ったから意外。

「良いですよ。」

「じゃあ11時頃に迎えに行きます。」

「車ですか?」

「恥ずかしながら。」

何が恥ずかしいのか良く分からないけど。

「楽しみに待ってます。」

アパートの位置をメールで伝える約束をして切ボタンを押す。

ワクワクしている自分が少し可愛い。

現在地とアパート名前をメールで送信。

さて、取り敢えずは小説の続きでも読んで落ち着くかな。

でも明日、何着てこう。