ピアスの秘密

最寄りの駅に着いた。
階段を昇ったら、ホテルが見えた。

イヴの日に二人で散歩した公園。
今夜はイルミネーションがないけれど、私にはただの街灯でさえも、キラキラしてみえた。

公園を通り抜けホテルに着いた。
エレベーターの前に立つと、

「こんばんは」とすぐ後ろで領くんの声がした。

「きゃっ、ごめんなさい。はやかったんですね。私、地下鉄で来ちゃいました。」

「僕はタクシーで」と二人顔を見合わせて笑った。

最初に驚いたからだろうか、いつもよりリラックスして話ができた。

彼は私が1人でエレベーターに乗らないように待ってくれてたのかもしれない。
初めて二人っきりでエレベーター乗った。私はこんなときに故障してほしかったと思った。

「いつも、ここですみません。」

「私は好きです。ここが」
「じゃあ、よかった。」

最上階へあっという間に着いた。

入り口には以前、私の名前をたずねた背の高い男性が立ち、優しく微笑んで席へ案内してくれた。

前と同じ、一番奥に私が座り、ホールに背を向けて彼が座った。

私にはまるで、イヴの続きが始まったようだった。

そして、今夜はきれいな満月がみえた。