きみのためのプレゼント

翔平が目を吊り上げて、私の真似をしてみせるけれど、ちっとも似ていない。後ろを向いてつい、大声を出すとクスクスと周囲の人に笑われてしまった。


「す、すいません」


謝る声が重なって、また笑われる。「あのカップル可愛い」と声が聞こえ、さらに恥ずかしい。前を向くと、ドア越しの翔平と目が合ったので「バカ」と口パクでいうと彼も口パクで返す。それがまた恥ずかしくて、目を逸らした。


「かわいい」



一年ぶりに来た陸上競技場。こんなにも大きくて広い場所だったんだ。去年は周りも何も見えてなかった。


ただ、ここで記録を残すということしか頭になかった。でも、今ここにいる私は去年とは全く違う。選手でもなんでもない。ただの一観覧者だ。


「・・・大丈夫?」


「・・・うん」


不思議だ。あんなにも、ここで走りたいと拘っていたのに、いざ来てみると、意外にも気持ちは落ち着いている。


むしろ、私よりも翔平のほうが落ち着かないだろうな。車椅子を押すペースがどんどんと遅くなっている。


まるで今ならまだ帰れると言わんばかりに。