きみのためのプレゼント

「あはは。そんなこといちいち言わなくてもいいのに。藤野さんって本当、可愛いね。光は本当は、もっと生きたかったんだよ。きっと、今も誰よりも後悔してるのは、光だと思ってる。だから「これからもよろしく」の言葉通り、俺は光とこれからも生きてくつもりなんだ」


「その気持ちがちゃんと、光くんに届いたんだね。だから私たちは入れ替わることが出来た。この入れ替わりは、藤本くん、きみのためのプレゼントだったんだ。光くんからの」


そうだ。でなきゃ階段から落ちて、入れ替わることなんて出来るはずがない。私と彼の足と境遇が入れ替わることが出来たのは、光くんがそれを叶えてくれたから。


自分を忘れず、自分のように生きようとしてくれる藤本くんに、今度は救える命を救ってあげてほしいというプレゼント。


そして、これは私のためのプレゼントでもある。自分と同じように辛い気持ちを抱え、衝動的に命を絶つような選択を選ばないようにするための。


「・・・俺のためのプレゼント」


彼はそう呟いた瞬間、堰を切ったように嗚咽を漏らし、泣きじゃくった。藤本くん、大丈夫。藤本くんのその思いはちゃんと光くんに届いてる。感謝している。喜んでるよ。


そして、その気持ちはちゃんと、私にも伝わった。あなたがあのとき心の底から私を救おうと、守ろうとしてくれていたんだって。


「ありがとう」


「ううん、私こそ、本当にありがとう。私を助けてくれて、守ろうとしてくれて。本当に感謝してもしきれないよ」


背中を撫でていた私の手を引き寄せた藤本くん。そしてそのまま、私は彼の腕の中へ。力強く抱きしめられた。


一ヶ月前にはこんな気持ちを感じることも、抱きしめられて嬉しいと思う感情も、溢れてくるくらいにこの人を好きだと思う気持ちも何一つ感じることがなかった。


七夕の願い事は、こんなにも素敵な気持ちを一緒に引き連れてきてくれた。