きみのためのプレゼント


「ご、ごめん。お待たせ」


玄関ですっかり打ち解けた充と、談笑する藤本くんに声を掛ける。車椅子を押すお母さんが、彼に「可愛いでしょ?」としつこく言うもんだから、若干、腹が立ち、「うるさいよ」と言い放つ。


「すごく可愛い。こんな可愛い藤野さん、独り占めできて、嬉しいです」



フワリと笑みを浮かべ、そう言う藤本くんは、あの日の面影なんて一つもない。いつものようにこっぱずかしいことが平気で言えるヘラヘラ笑顔の彼だった。


花火大会の会場は、ここから電車で二駅の繁華街。私は、まだ来たことがなかったけれど最近大きなショッピングモールが出来た場所ということもあり、今年の花火大会はかなり混雑が予想されている。


「早めに来てよかったわね」


最初は電車で行こうと思っていたけれど、お母さんに送ってもらって正解。ショッピングモールの中の駐車場や周囲の駐車場もほぼ満車。


それでも、一つだけ空いていた近くの駐車場に停められたのはラッキーだと思う。


「送っていただき、ありがとうございます。何かあれば必ず、すぐに連絡させていただきます。無理を許してくださって本当にありがとうございます」


車に積んだ車椅子を下ろしてもらい、乗せてもらった私は、ここで充とお母さんと別れて藤本くんと二人で花火大会の会場に向かう。車椅子で花火大会なんて周囲の目が怖かった。


「大丈夫。特等席を確保してるから」


特等席なんてどこだろう。小学生の頃はよく来ていたけれど、かなりの人の多さに、いつしか行きたいとも思わなくなってしまった。それでも、家族で見た花火は私にとってとてもいい思い出でもある。


色鮮やかな花火とドドーンと響く大きな打ち上げ音。夏は嫌いだし、人混みも好きではない。でも、唯一夏で許されるのは打ち上げ花火。


久々の花火は少しだけ、気分を高揚させた。