きみのためのプレゼント

制服以外のスカートなんて、履いたのはいつぶりだろう。お母さんが買ってきた服は、あまりにも女の子らしい服で、私には似合わない。


それなのに、お母さんの掛ける「可愛い」の魔法は、そんな私でも可愛く思えるような気になるから不思議だ。


「よし、これで完成」



車椅子に座ることには、だいぶ慣れてきたし、今や私の相棒と言っても過言ではないけれど、今日はどうしても違和感しか感じられない。


白い無地のTシャツの上から重ねてきたのは、今まで絶対に着ることのなかったワンピース。


私の好きなミントグリーンのグラデーション生地に描かれたのは海の中をイメージしたヒトデや貝殻。裾にはたくさんの宝石と少し大きめの懐中時計。確かにデザインはとても可愛いし、水族館みたいで好みだ。


でも、やっぱり恥ずかしい。


初めて、ペディキュアなるものも慣れた手つきでお母さんがワンピースに合わせてやってくれた。二色のブルーのグラデーション。


ラメが入っていて、それだけでも十分なのに綺麗にラインストーンが乗っている。


「やっぱり、女の子なんだから可愛くしなくちゃ。おしゃれを楽しめるのは女の子の特権よ。今日の沙織はいつもより何十倍も可愛い。近くにはいるけれど、藤本くんとのデート楽しんできなさいね」


デートではない。今日は藤本くんの話を聞くために花火大会に行くだけ。そう言っているのに聞く耳持たず。なんでうちの周りはちゃんと話を聞かない人たちばかりなんだ。


でも、今までなら全力で否定していたその言葉も、少しだけ否定して、あとは何も言わなかった。


せっかくおしゃれをさせてもらったからきっと気分が浮かれているのだろう。デートでも悪くないかもしれない。