きみのためのプレゼント

そんなことを思い出しながら、藤本くんに教室まで、連れて行ってもらうと誰も、私に見向きもしないのに、一人だけ私の姿を見て挨拶をしてきた。


私は彼女が苦手だ。


なぜなら、彼女、岡部はるかは、今年の全国陸上記念大会で、私の去年いた場所に立つ人間だから。


それに彼女は、部内からも慕われていた。可愛らしい笑顔。小柄ながらに持久力もあり、私みたいな無愛想にも毎日、話しかけてくる。


そして、あの日、溝上先生と比べられたのも彼女とだ。


「特に岡部の愛嬌を藤野には、見習ってもらいたいものだよな」


溝上先生の言葉が頭を過ぎる。いつも笑顔でみんなから好かれていて、悩みなんて何もなくて、毎日満たされてる。


ああ、そうか。私が藤本くんを苦手だと思ったのは、彼女に似ているからだ。


でも、昨日、藤本くんと足が入れ替わって、それは私の誤解だとわかった。だとすれば、彼女も何か抱えていて、それでも笑顔でいるのだろうか。



「藤野さん、おはようって言ってるよ」


私がぼんやりと考えて、彼女、岡部さんに返事をしないと、藤本くんに後ろから肩を叩かれた。 元々、返事なんてしたことがない。


いつも彼女が勝手に私に絡んでくるだけで、私はいつも無視しているんだ。


「藤野さん、可愛い顔、もったいないよ」