きみのためのプレゼント

目に掛かる前髪をあたかも自然に払う藤本くん。馴れ馴れしいからやめろと言っているのにもかかわらず、彼は、肘当てから両手を離すと、私の頬を包み込んだ。


「なんで、そんな冷静なの?普通、望んだこととはいえ、自分の足が今までとは違うならもっと動揺しない?」


真剣な眼差しで問いかけてくる、藤本くんにどんな言葉を返すことがいいのかわからない。

だけど、これだけは言える。


「だって、動揺しても何も変わらないから」


「・・・そっか。だったら尚更、俺たちはもっとお互いのことを知らなくちゃいけないね」


「じゃあ、言いたいこと、言えばいい?今すぐ手を離して」


触るなと言っているにもかかわらず、余計に触られて限界。耐性もないけどさすがに、恥ずかしさを通り越して怒りも湧いてくる。睨みつけながら怒りをぶつけた。


「ごめんごめん。藤本さんとこんな風に会話が出来て、嬉しくて。なんたって俺にとって藤本さんは憧れの人だったから」


「別に憧れられるようなものでもないよ。今の私は」


両手はパッと離してくれたけれど、また肘当てに両手をついて話す藤本くん。


至近距離が落ち着かないけれど、今、この人が帰ってしまえば、私は一人、ここで動けず置き去りにされてしまう。