きみのためのプレゼント

「藤野さん、ごめん。俺が安易に入れ替わろうとか言い出したから」


今にも泣きそうな表情を浮かべて必死に謝る藤本くん。まるで、自分が悪いと責めるようなその態度に大きく首を振った。

「どうして、謝るの?私もこうなりたいと望んだんだよ。だから、藤本くんに謝られるのはおかしい」


「でも、足が入れ替わったんだからこれから藤野さんは、不自由なことばかりになってしまう。俺が入れ替わりなんて言い出さなければ」


「・・・藤本くんが入れ替わりを言い出してくれなければ、私はきっと、今ここにはいなかったよ」


私の言葉の意味を理解したのか、藤本くんはそれ以上、何も言わなくなってしまった。そう、これは私が望んだこと。


走れなくなればいいと望んだ、私の願い。


「・・・走って、みないの?」


ふと、隣を見れば、膝を抱えて蹲る藤本くん。さっきから彼は、私の心配ばかりしているけれど、まだ一度も動くようになった足を使っていない。


彼も望みを叶えて嬉しいはずなのに、私のことばかり心配する。もっと喜んで飛び跳ねてもいいのに。


「・・・いいの?藤野さん、俺の足になって走れないのに」


「それは、私が望んだことだから。だから藤本くんも走れるようになったんだからもっと喜んで飛び跳ねてもいいと思うよ」