きみのためのプレゼント

「・・・じゃあ始めよう。俺はもう一度、走りたい。藤野さんは、もう二度と走りたくない。そう言って落ちるよ。いい?」


「・・・わかった」



衝動的に自殺する人の気持ちが、今はとても分かる気がする。


私は、幸いこの命を有効活用してくれる人に巡り会えた。こう考えると、まるで入れ替わりがうまくいったかのよう。


でも、なぜだろう。本当に入れ替われるような気がする。




彼のようにヘラヘラ笑顔で人見知りもなく、いつも人が周りに集まっているような人間になれるなら『藤野沙織』も報われる。幸せにしてくれるだろう。



私のような人付き合いが苦手で、一匹狼で構わない。だけど、努力だけは惜しまない人間なら『藤本翔平』も私の努力で少しは歩けるようになるかもしれない。




彼が私を生かしてくれるなら、
私も彼を生かしてあげなくてはいけない。