「・・・電車乗らないの?駅、向こうだよね?」
「・・・自転車って、難しいよね。俺、小学生の時以来乗ってなかったし、なかなかコツつかめなくてさ。しかも、先週に買ったのに届いたの今週だよ。だからちゃんと練習できなくてさ。それでも、沙織を後ろに乗せたくて悪足掻きしたらこんな傷だらけ。笑っちゃうよね」
公園を出て、数十分。沈黙は減って、他愛のない会話はするも、ちっとも駅に向かわない彼。駅どころか、浦賀川に沿って、河川敷をただ進むだけ。
お花を買いに行こうと行っても、お供え物を買いに行こうと言っても、「後でね」と。挙句、私が言った言葉にも、質問とはまったく違う答えを返してきた。
「お墓、行かないの?」
いい加減にしてよ!と怒鳴りつけることは、簡単だ。でも、それじゃあまた、きっと翔平を傷つける。
だけど、ここまではぐらかされると私だってもう、お墓には向かっていないことくらいわかる。気持ちをグッと堪えて言った。
「・・・また、休憩してもいいかな?」
小さく絞り出した彼の声。蝉の鳴く声にかき消されるかのような声だったけれど、私にははっきりと聞こえた。その後の「ごめん」が。
彼が、河川敷の並びに置いてあるベンチにそっと車椅子を停めた。
そして、先ほどと同じように、私を慣れた手つきで車椅子から抱きかかえておろし、ベンチに座らせた後、隣に自分も腰を下ろした。
「・・・自転車って、難しいよね。俺、小学生の時以来乗ってなかったし、なかなかコツつかめなくてさ。しかも、先週に買ったのに届いたの今週だよ。だからちゃんと練習できなくてさ。それでも、沙織を後ろに乗せたくて悪足掻きしたらこんな傷だらけ。笑っちゃうよね」
公園を出て、数十分。沈黙は減って、他愛のない会話はするも、ちっとも駅に向かわない彼。駅どころか、浦賀川に沿って、河川敷をただ進むだけ。
お花を買いに行こうと行っても、お供え物を買いに行こうと言っても、「後でね」と。挙句、私が言った言葉にも、質問とはまったく違う答えを返してきた。
「お墓、行かないの?」
いい加減にしてよ!と怒鳴りつけることは、簡単だ。でも、それじゃあまた、きっと翔平を傷つける。
だけど、ここまではぐらかされると私だってもう、お墓には向かっていないことくらいわかる。気持ちをグッと堪えて言った。
「・・・また、休憩してもいいかな?」
小さく絞り出した彼の声。蝉の鳴く声にかき消されるかのような声だったけれど、私にははっきりと聞こえた。その後の「ごめん」が。
彼が、河川敷の並びに置いてあるベンチにそっと車椅子を停めた。
そして、先ほどと同じように、私を慣れた手つきで車椅子から抱きかかえておろし、ベンチに座らせた後、隣に自分も腰を下ろした。

